文学部門寸評

今年も残念ながら大賞、優秀賞の該当者はなかったものの、読者の熱い思いが伝わる作品が多く、大変読み応えがありました。あえてアドバイスをさせてもらうならば、第三者に読んでもらうという意志、いうなればサービス精神が、もう少しうまく自分の表現として取り込まれていたら、「読み物」としての魅力も倍増したのではないかと思われます。そして、作品はあなたの分身です。自身の作品に愛情を感じ、愛情を詰め込んで送り出してあげてください。その思いはきっと読み手に伝わるはずです。

さて、今年の傾向としては、自身の経験を語る作品が多かった。そんななかで、ジョンとスーパーマンを演じたことで有名なクリストファー・リーブを引き合いに出し、世界を憂いながらも生きる強い希望が感じられた山城屋哲さん(39)の『心が疲れ果てるまで』、リアルタイム世代の微笑ましい音楽室での出来事「‘Yesterday’盗作事件」を描いた与田亜紀さん(56)の『音楽教室のイエスタデイ』には好感が持てた。欲を言えば、もう一歩つっこんで作品と向き合ってほしかった。別の言い方をすればもっと読みたかった。応募作品全体に言えるのだが、短く淡白にまとめられすぎている。もちろん長いものが必ずしもいいとは言えないことは、ジョンも好きな俳句が物語っているのだが、「読者に何を伝えたいのか」今一度、咀嚼して考察すればより良いものができると思う。来年度に期待。そして佳作は、俳句100句を送ってくれた蜂屋正純さん(43)。「数打ちゃあたる」的要素も多少なきにしもあらずだが、そのなかにイマジネーションを喚起する7句の光るものを発見した(78ページに掲載)。ビートルズ・ファンなら思わずイマジンしてしまう感覚を今後も大切に養っていただきたい。残念ながら今期も大賞、優秀賞は該当者なし。来期を期待しています。

(講評/ザ・ビートルズ・クラブ大賞審査委員会)


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