STORY1 ジョンとポールの出会い

第2次世界大戦のまっただなかだった1940年代初頭、イギリスの港町リバプールで、将来世界をゆるがすほどのパワーと才能と強運を授けられた4つの生命がこの世に誕生した。

ジョンは両親の愛情をほとんど知らずに育っている。船乗りだった父フレッドは留守がちで、母ジュリアもまた親としての責任にしばられず自由気ままな生活をしており、わが子にもあまり関心を示さなかった。やがて父が失踪し、母も新しい男性と生活を始めるようになると、ジョンは母の姉のミミ・スミス夫妻にひきとられる。本を読むのが大好きだったジョンは、小学校のころから自分でも絵本を作ったりして、早くも創作の才能を発揮しはじめた。クオリーバンク・グラマー・スクールへ入学すると、リーゼント・ヘアに当時最高にかっこいいと思われていたドレイニーという細身のズボン、そして黒いジャケットで決め、いつでも攻撃的で、あらゆる校則を破っては不良少年ざんまいをしていた。聡明なはずなのに学業は落第点。エルビス・プレスリーに触発されて音楽にも夢中になった。クオリーメンというバンドを結成して、ダンス・パーティで演奏したりコンテストにも出場して、積極的に演奏の場を求めていた。

ポールと弟のマイケルは、綿花取引所で働いていた父ジェイムズと看護婦だった母からの愛情あふれる家庭に育った。ポールは学校の成績もよく、小学校を卒業すると名門リバプール・インスティチュート(現在のLIPA)へ入学。いろいろと悪さを覚えるようになるが、要領よくたちまわっていた。ところがポールが14歳のときに、母が乳癌で死去。悲しみをまぎらわすかのように、ポールは夢中でギターを弾くようになった。ポールとマイケルは父親に男手ひとつで(親戚の助けも得ながら)育てられたが、その父自身、ジム・マック・バンドというセミ・プロのジャズ・バンドを結成していて、息子たちが音楽に興味を持つことには大賛成だった。家には当時非常にぜいたくだったピアノやレコード・プレーヤー付ラジオもあった。ポールは子どものころにピアノを習わせられたが興味がわかず、トランペットをプレゼントされたこともあったがこれもいまひとつで、店に行ってそれをギターと取り替えてきた。ポールのギターの腕はなかなかだった。 1957年7月6日、クオリーメンは地元ウールトンのセント・ピーターズ教会で開かれた夏のガーデン・パーティで演奏。このときクオリーメンを観にきていたのがポールだった。ポールはジョンを見て、ショックを覚えた。これがビートルズの始まりを予感する運命的な出会いとなった。

ジョンも初めてポールに会ったとき、直観的になにかを感じていた。ジョンはのちに、「ポールに出会ったあの日、あの日こそがすべての始まりだった」と語っている。


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