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ハリウッド・ボウル・オブ・ホール・オブ・フェイムでのエリック・アイドルのスピーチ


ジョージが6月28日、ハリウッド・ボウル・オブ・ホール・オブ・フェイム(Hollywood Bowl Hall of Fame)に殿堂入りしたときの、エリック・アイドル(Eric Idle)によるスピーチ。

私の友人であるジョージ・ハリスンがハリウッド・ボウル・オブ・ホール・オブ・フェイムに殿堂入りすると聞き、私はまず、ジョージなら会場に来なかっただろうと思いました。なぜなら、彼は名誉なんて、どうでもいいからです。

彼は日常生活のほうがショー・ビジネスより重要だと考える風変わりな人物のひとりでした。それはここハリウッドでは異説であることは承知しています。
ここにいながら言うのは申し訳ないのですが、私にはジョージの声が聞こえるのです。
「オー、とてもいい。とても役に立つよ。死後のグラミー賞?ナイト爵位?死後特別功労賞?僕は死んでいるのに、この受賞したものはどこに置いたらいいんだい?次はなにがもらえるの?」彼は天国で新しい棚が必要になることでしょう。

故に死後の殿堂入りというのはむしろ不愉快に聞こえます。しかし、我々は、ジョージがどこかでいまも創意に富んで、ギリシャ料理のレストランでお皿を壊していると思いたいのです。
私はジョージが死後に殿堂入りするほうを好んだと思います。なぜなら彼はコメディアン―貧しく病気で悲しい狂った愛らしい子犬である我々―を愛していたからです。なぜならコメディアンは、ジョージのように、きついジョークを言う能力があるからです。

ジョージはモンティ・パイソンをハリウッドに進出させ、映画『ザ・ライフ・オブ・ブライアン』のためにお金を出しました。ジョージがそれを見たかったからです。たいていの人は、映画のチケットのためにお金を出したことならあるでしょうが。

彼の人生は笑いに満ちていました。彼の死でさえ笑いに満ちていました…病院でジョージは看護婦に点滴にフィッシュ・アンド・チップスを入れてくれと言ったのです。医師は彼が妄想癖があると考え、息子のダニーに「心配しないで、このような状態にも医学用語があるのです」と言いました。
ダニーは言いました。それは『ユーモア』ですね」。
今夜ここにダニーがいなくて特に残念です。
なぜなら、私は彼を「ヒア・カムズ・ザ・サン(ほら、息子(サン)が来た)」と彼を紹介したかったからです。でも残念ながら、ばかな冗談を言う機会は失われてしまいました。

ジョージはかつて私にこう言いました。
「もしビートルズになると知っていたなら、もっと一生懸命がんばっただろう」

ジョージを特別な存在にしたものは―ビートルズの最高のギタリストという以外で―ビートルズがすべて達成したあとにジョージが人生で成したことです。彼は人気商売というものは完全な「クソッタレ」と気づいたのです。そして彼は人生の美、真実、意味を発見しようとし、発見したのです。
ジョージは著書『アイ・ミー・マイン』でこう言ってます。

「たいていの人が富、名声、地位のために苦闘している。しかしそのいずれも重要ではないのだ。結局死がすべて取り去ってしまうのだから。だからなにかのために奮闘して人生を費やすのは、事実上時間の無駄なのだ」

ジョージはそうではありませんでした。彼はここロサンゼルスで、愛する人々に囲まれ美しく威厳をもって亡くなりました。彼は友情に対する並外れた収容力を持っていたからです。この地上全域で、人々は彼を愛しました。ジョージは実際、道徳的な哲学者でした。彼の人生は真実の探求につきました。
そして、死にそなえて準備をしていました。これはロックンロール界の人間にしては少し変
わっています。

マイケル・ペイリン(Michael Palin)はジョージの死を本当に悲しいが、ジョージがいる来世がさらに魅力的であるように思えるようになったと言いました。
ジョージは庭師でした。彼は彼が成すすべてにおいて美を育てました。人生においても、音楽においても、結婚でも、そして父親としても。

この賞はジョージのためではありません。私たちのためなのです。なぜなら私たちが彼に名誉を与えたいからです。私たちはジョージにありがとうと言いたいのです。私たちは本当に彼がいなくてさみしいです。彼が人生において到着したいくつかの場を見てみましょう。

(ジョージの若いビートルズ時代から円熟したソロ・アーティスト時代まで、写真がスクリーンに映し出される)

ああ、彼はそれでもここにはいません。しかし彼にとってとても大切な、とても特別な人物をお呼びしております。ビートルズと演奏した第1の人物です。唯一無二のビリー・プレストンです。

(ビリー・プレストン、コーラスを率いて、‘My Sweet Lord’を歌う)

ありがとう、ビリー・プレストン。
死後の受賞における大きな障害は、授与される人がいないことです。
だから私はこれを彼の生涯の恋人、彼のダーク・スウィート・レディ、親愛なるすばらしいオリビア・ハリスンに捧げたいと思います。彼女は今夜ここにいます。
彼がいないことがどんなことなのかあなたは心から知っています。
ありがとう、ハリウッド・ボウル。
彼に名誉を与えてくださったことはいいことです。
おやすみなさい。


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