新着ニュース


サー・ジョージから、プロデューサーをめざす人へのアドバイス


1. アーティストとうまくやる
もしあなたがそのアーティストを好きではなく、彼らもあなたのことを好きでなければその関係に未来はないが、あなたはプロデューサーである以上、人から共感を持たれる人柄である必要がある。これは私が息子と仕事をしたときに喜ばしかったことのひとつだ--彼はそれを持っている。彼は人とうまくコミュニケーションをとることができ、ジョークを言い、みんなを笑わせる。それはビートルズが持っていた才能だ。すばらしいカリスマ性だった。彼らのそばにいる人は気分がよくなる。それが彼らと契約した理由のひとつだ。私は「彼らが私を満ち足りた気分にさせるなら、彼らはオーディエンスも満ち足りた気分にするだろう」と思った。

2. 最初よくなかったからといって、その曲を却下するな
'Please Please Me'が典型的な例だ。なぜなら私はその曲を聞いて言った。「この曲は言葉が出ないくらい退屈だってわかるかい?これは葬送歌だよ。2倍の速さにすれば、まともに聞こえるかもしれない」。彼らはその言葉をまにうけた。私はほんのジョークのつもりだったが、彼らは再びその曲を持ってきて速度を速くしてハーモニカを加えて、私に演奏してみせた。そしてそれが初の大ヒットになった。

3. それが誰であれ、アーティストに立ち向かう
相手がポール・マッカートニーであろうと、プロデューサーはアーティストに立ち向かわなければならない。それは非常に重要なことだ。もしあなたがイエスマンだったら、いい仕事はできない。困ったことは多くの人がそうであることだ。それがほんとうにポールが苦労していることだ。なぜならほんとうに思ったことを言ってくれる人が誰もいないのだから。

4. 各アーティストに応じて対応する
ダコタ・アパートでジョンと過ごしたときがありました。私たちは昔の思い出話をして、彼は私に「ねえ、ジョージ、できることならすべてもう一度やり直したいよ」と言った。私は「スタジオに戻って、私たちがやった全部の曲を録音したいってこと?」と言った。250曲だ!ジョンは「そうじゃないよ、今度はもっとうまくできるだろうってことだよ」「 'Strawberry Fields Forever'はどうかな?」と私が言うと、「とくに'Strawberry Fields'だね」とジョンは答えた。

5. スタジオ入りするときは、少なくとも必ずアイデアの土台は持て
アーティストがスタジオに来るときには、プロデューサーは何かしなければならない。さもなければ全くの時間の無駄になる。“SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND” 後、私たちにとってレコーディング・スタジオは実験の場だったと認識している人も多いのではないかと思う。しかし、実際はそうではなかった。『ペパー』後に私たちがしようとしていたことは、彼らがそれまでに聞いたことのあるものと異なるものを作ることだった。彼らはただふらりと入ってきて、「この楽器使ってみない?」とか言ったりはしなかった。決して行きあたりばったりではなかったのだ。

6. セッションを止めるべきときを知る
プロデューサーが居眠りしてしまうほど長くセッションを続けるべきではない。私は実際、いくつかのビートルズ・セッションで眠ってしまったことがある。とても長時間だった。ビートルズ以前、3時間くらいのセッションが通常だった--組合がそう指示していたからね。そのうちに、そのアーティストはプロデューサーよりも決定権を持つようになった。

7. うまくいっていないときに、そう忠告する覚悟をする
時には曲があまりよい出来でないことがある。あるとき私はポールと仕事をしていた。'Pipes of Peace'だったと思う。ずっと前に初めて聞いて私が不採用にした曲だ。彼はその曲に取り組んでいて、そうする価値があると思ってやっていた。何度も何度もテイクをやって、へとへとになるまでやっていた。私が入って行って「ポール、それはうまくないな」と言った。彼は「なぜよくないと思うんだい?」と、とがめるように私の方を見て言った。「なぜならその曲自体がいまいちなんだよ」。彼は私の方を見て、ある種の行き詰まった空気が流れた。そして彼は言った。「僕がわかっていないと思うのかい?」と言った。私は「くそっ」と思った(笑)。
作曲家の中のアーティスト・エゴが、自分の作品をすばらしい曲だと思い、彼は何とかその曲をものにしなくてはと思った。でも私が入っていって彼をひと押しすると、現実に目が向き彼はそれを放棄した。そういうことをやるのは厄介だ。なぜなら彼を怒らせてしまうから。でも、言うべきことは言わなければならない。

8. テクノロジーに押しつぶされるな
4トラックでレコーディングされた“SGT. PEPPER”は、もしも無限のトラック数で録音されていたら、違ったものになっていただろう。なぜなら、限られたトラック数は、私に--そして私を通してビートルズに--試練を与えたからだ。彼らはものごとをてきぱきこなさねばならなかったし、自分たちで演奏しなければならないことをわかっていた。
現代テクノロジーのひとつの特徴は、あまりにも多くの選択肢を与えすぎて、直感を鈍らせてしまうことだ。それにボタンひと押しであらゆるサウンドエフェクトを得ることができる。私たちの時代には何日もかかってやっていたことがあっと言う間にできてしまうから、チャレンジ精神がなくなってしまう。

9. 完璧の向こうの人間らしさをとらえる
私は人間らしさをとても重用視する。50年代にフランク・シナトラのレコーディングに行ったことがある。フランクはたまに調子外れで歌っていた。そして彼はおそらくもっとうまく歌えたかもしれないのにそうやって歌っていました。でも調子外れで歌うことにより、すばらしく聞こえました。正しい音程で歌ってもひどく聞こえる人もいます。私はちょっとしたミス、ちょっとした人間らしさが好きです。そしてそれはビートルズの曲でも聞くことができます。リンゴは決してクオーツ並みの正確さでビートを刻みませんでした。生活の中でさえも。


[新着ニュース一覧にもどる]